告別への予感はその時もう生まれていた筈だ。<br />しかしそれはもっと以前に、もっともっと遠い昔に既に生まれていたのかもしれない――異国で識り合った女・マチルダとの深い愛を諦め妻と2人の娘のいる家庭へ戻った上條慎吾。<br />娘・夏子の自殺、上條の死、二つの死は響き合い世界は暗く展かれてゆく。<br />福永武彦の代表的中篇小説「告別」、「形見分け」を併録。<br />