北面の武士佐藤義清(のりきよ)は、決然と出家した。<br />忘れ得ぬ女院への激しい恋を秘め、仏の救いを願いながら歌に執着する懊悩の日々。<br />源平の争乱の世に歌一筋、草庵閑居と漂泊の旅。<br />矛盾と相克の末に西行は、わが心ひとつがついに捕えきれないことを悟る。<br />人間西行を描いて深い感動をよぶ、芸術選奨文部大臣賞受賞作。<br />