南町奉行所の名うての定町廻り同心だった日下伊兵衛は、息子新一郎に譲るため、臨時廻りに転じることになった。<br />扱う事件は迷宮入りの一筋縄でいかないものばかり。<br />妻萩乃との縒りはなかなか戻りそうにない。<br />新内の師匠おさわとのひとときが唯一の伊兵衛の安らぎだった。<br />だがおさわに呉服問屋松島屋の後妻の話が舞い込む。<br />しかも縁談に反対していた松島屋の娘が拐かされたというのだが? 人情捕物帖。<br />