下田一の美妓で、明烏のお吉と人気の高かった娘に立った白羽の矢。<br />お国のために、好いた男の夢のために、異人の許に送られたが、通商条約締結後、無惨に砕かれた女だけが残された。<br />ハリスの許から暇を出されたお吉には、下田の町は居づらかった。<br />愛しい鶴松が侍になっているはずの江戸へ、身を隠して行く。<br />時代の嵐に巻き込まれ、男たちの明治維新に利用された女心。<br />美しくて脆かった女の意地を切々と描く、著者初の時代長編小説。<br />