大丈夫だ、まだ、大丈夫なはずだ――。<br />中卒、日雇いバイト暮しの北町貫多は、23歳を迎えて自身の人生の敗北を決定的に覚えるようになっていた。<br />その彼の唯一の慰めは田中英光の私小説の復読であり、やがて冴えない日々の中で藤澤清造の著作にも出会う。<br />そして貫多は、自らも私小説を書いてみるのだが――。<br />生命力あふれる生活不能者の儚い希望とあえなき挫折を描く、最新の孤狼私小説集。<br />表題作と「陋劣夜曲」、他二篇を再録。<br />