僕は少年時代、何度も死の誘惑が待ち伏せていた。<br />今度は42歳で脳溢血だ。<br />奇跡の生還をして2年、ベンチに座っていると、記憶の底から怪しく、おかしく、懐かしい人々がやってくる。<br />稲荷大明神が降りた荒木のおばさん、キブツで出会った女、フランスの小さな城の田園生活……普通の生活へのいとおしさ、懐かしさを謳い上げ、病んで知る人生の機微を鮮やかに描いた15の名篇。<br />高校国語の教科書にも収録された「丘を越えて」を含む。<br />