幸福のパズル
人気女性作家・倉沢みちるは新作を書き上げた。
葉山の古い小さな家に一人で。
みちるが作家デビューを果たしたのは5年前の秋だった。
高3の初夏、みちるは中学のときの同級生・蓮見優斗と海で偶然に出会った。
優斗は葉山の老舗「蓮見ホテル」の御曹司。
男女を問わず人気があり、地味なみちるには雲の上の存在だった。
だが、海辺の出会いが二人を結び付け、交際を始めた。
ところが喜びも束の間、いっしょに行くはずだった花火大会で行き違いになり、直後に優斗はアメリカに留学。
会えないまま二人は別れを迎えるた。
その秋、信じられないような出来事が起きた。
妹に誘われて応募した作品が「小説オリオン」の新人賞で大賞を受賞したのだ。
優斗と過ごした2ヵ月間に夢中で書いた、初恋を描いた青春小説だった。
「現役高校生作家」として脚光を浴びたみちるは、やがて分不相応な収入を得るようになる。
だがそれは、家族がバラバラになっていくきっかけでもあった。
父は家業のパン屋を閉めてイタリアンレストランを経営。
母は高級エステに通い宝飾品を身に纏うようになった。
妹とも決定的な亀裂が生じ彼女は家を飛び出していた。
そして、みちるは日本に帰国した優斗と再会する。
5年の月日を経て、蓮見ホテルで。
人生の変転が、また始まろうとしていた……。
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