遠い、北の町の盛り場で、ステージに立ち、酔客相手に裸身をさらす、踊り子ひとり。<br />地方のクラブやキャバレーをまわる、ヌード・ダンサーの夕雨子だ。<br />踊り子だった母が、呉服屋の息子と恋をして、生んだ娘。<br />彼女がどんな哀しみにみちた過去を抱いているのか、客はだれも気にしない。<br />しょせん彼女は流浪の芸人であり、風でしかないのだ。<br />そして月日が残酷に移ろってゆく。<br />けなげな踊り子の人生哀歓を、美しい抒情性とリリシズムあふれる澄明な筆致で綴った、連作小説集。<br />