対象との距離を微妙にはかりながら、すれすれのところで作品として成立させる、吉行淳之介の短篇集。<br />作者自身の幅を反映して、対象は読者から、バーの女給、エロ雑誌の編集者、棟梁、作者とおぼしき主人公の周辺に登場する諸人物は、いずれも一癖あるが、それを冷静に、ときには諷刺をまじえて、面白さをひきだす。<br />表題作のほか、「青い映画の話」など12篇収録。<br />