みかん、好き?
「みかん、好き?」 突然、女の子が言った。
「え?」「私は大好きなのじゃ。
食べすぎて、冬になると全身が黄色くなるくらい」 ほら、と袖をまくった。
「最初は手のひらや足の裏が黄色くなるけど、そのうち手の甲や足の甲も黄色くなって、さらに食べ続けたら、顔もお腹も黄色くなるのじゃ。
といっても、今は春だからだいぶ薄くなったけど。
冬はもっと黄色かったのじゃ」 何を言ってるんだろう。
拓海はあとずさった。
中学生か高校生に見える。
でも見かけたことのない顔だ。
「そうじゃ」と、女の子が思い出したように手をたたいた。
「ここって、西村実さんのみかん園かどうか知ってる?」「え、じいちゃんを知っとるん?」「孫なの?」 女の子がぱっと笑顔になった。
「よかった。
やっぱりここが西村実さんのみかん園なのじゃ」 そう言うと、斜めにぶら下げたバッグから、定期券入れのようなケースを取り出した。
――本文より西村拓海の目の前に突然あらわれた、少し変わった話し方をする女の子・長谷川ひなた。
拓海の祖父がつくるみかんに感動して東京からはるばるやってきたという。
困惑する拓海をよそに、ひなたと祖父はどんどん仲良くなり、いつのまにやら一緒にみかんを育てることに……。
彼女に振り回されながら、みかん作りを通して少しずつ成長していく、甘酸っぱい青春小説。
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