伜のためにと、50両を盗んだ、腕利きの屋根職人。<br />それを知った親方がとった、思いがけぬ行動は? さすらいの銀細工師に寄せた茶屋女の恋心、足を洗いそこねた密偵(いぬ)の哀しみ、など、懸命に生きる庶民の意地と想いが交錯し、物語が物語を紡ぎ出す。<br />7つの短篇のどこから読み始めても、やがてひとつの輪をなす、円熟の連作。<br />親子の情、秘剣の冴え、忍ぶ恋! 八百八町に生きる庶民の哀歓が、時空をこえて鮮やかによみがえる。<br />