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あおいの世界

小学五年生のあおいは、父親の仕事の都合で、カナダに引っ越すことになった。
あおいには空想癖があり、ストレスを感じた時に空想すると、ストレスが緩和されるのだ。
しかし、空想している様子が気持ち悪いと、クラスで浮いた存在になってしまった過去があるので、新天地のカナダでは、なるべく空想はしないで、普通にしていようと決めていた。
ところが、カナダの普通は、日本の普通とは全く違う。
学校は先住民の歴史を記念してみんなでオレンジを着る「オレンジシャツデー」やヒーローのコスプレをする「スーパーヒーローデー」など不思議な行事だらけで、あおいは戸惑うことばかり。
隣の家に住むゲイカップルや、クラスメイトのアディソンの影響もあり、あおいは、普通でいようとする努力をやめることに・・・・・・。
九月最初の火曜日なのに、こんなに寒いなんてさすがはカナダだ。
今にも雪がふり出しそうな白い空を見上げて、日本はまだ夏なんだろうなあと思った。
うんざりしていた暑さが、なんだか恋しい。
暑さが恋しいんじゃなくて、日本が恋しいのかな。
あんなに居心地が悪かったのに、変なの。
空に向かって両手を広げて、全身に冷たい風を受けてみた。
寒くて体がカチカチになる。
冷とうイカになったみたい。
本当にイカになれたらいいのになあ。
そうしたら、カナダの学校なんかに行かなくていいもん。
「あおい。
なにやってるの。
早く車に乗りなさい」 お母さんが、カギをかけながら言った。
「あ、はーい」こんなことやってたから、居心地が悪くなったんだった。
ふつうにしてないと、ここでも居心地が悪くなっちゃう。
──本文より。




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