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飆風

作家になることは悪人になることだ。
生きることで他人を傷つけ、小説を書くことで自らをも痛めつけてゆく。
すさまじい作家が、己の精神を追い込み、崩壊していく様を曝した、最後の私小説――「靴と下駄とスリッパが空中を飛んでいるんだ。
ほら、そこに。
」「くうちゃん、何言ってるの。
何も飛んでいないじゃない。
」「いや。
飛んでいるんだ。
階段も廊下も流れているし。
」「変ねェ。
何も流れていないじゃない。
いつもの通りじゃない。
」「ああ、俺は気が狂った。
アロエの毒を呑まされた。
」「誰に。
」「誰だか分からない。
俺の頭の中を風が吹いていくんだ。
」「風?」(本文より)




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