水差しから救いの水を飲んだ直後息絶えた病床の母(「水」)。<br />「死にたくない、俺ひとり」妻の胸で叫ぶ癌を病む夫(「谷」)。<br />生と死のきわどさ、戦き、微かな命の甦りの感覚を、生理と意識の内部に深く分け入っていく鋭敏な文体で描出した、「影」「水」「狐」「衣」「弟」「谷」の6作による初期連作短篇集。<br />