敗戦の混乱の中で真実を探る男の謎――娼婦が立つ露地裏、常連に支えられた小さなバー。<br />そこに気まぐれに現われる正体不明の男を、常連客は冬の紳士と呼んだ。<br />男は自棄になった若い女性を救い、彼女のヒモを気取る義兄に生きることを教える。<br />実は彼自身、はためには順調にみえる事業や家庭を捨て、自らの第2の人生に挑戦していたのだった。<br />冬の紳士こと尾形祐司の奇矯な行動を通して、敗戦後の日本人の生き方を示唆した記念碑的長編。<br />