月子の父親が陥れられることによって登場した小田村大助。<br />奪われるようにして小田村と結ばれた月子。<br />政治と実業の世界の鬼であった小田村は、また、奔放な性を生き、女性遍歴を重ねていく。<br />運命にもてあそばれた月子は、短歌に道を見出すことで、傷を癒し、自らを支えようとする。<br />――息子・由雄の眼を通し、母・月子、父・大助の愛憎の劇を冷徹に描いた自伝的作品。<br />亡き母への痛切なる鎮魂歌。<br />