「四時半ごろ、浅見川にいたわたしが六時に東京で殺人をやるなんて不可能じゃないですか」と千家和夫が言う通り、手札の写真は、下り’はつかり’をバックに釣糸をたれる彼のものであった。<br />当日の撮影に間違いなし、と傍証が固められては、丹那刑事も一撃を喰った感じで、南風荘事件の捜査はフリ出しにもどった。<br />…… という表題作のほか、全6編を収める本格派の驍将・鮎川氏の新作推理小説集。<br />