加納大尉夫人
大阪で指折りのメリヤス問屋の末娘に生まれた安代は、卒直な明るさを持つ娘であった。
安代が女学校を卒業した年に、戦争が始まった。
ある日、母に見せられた1枚の写真、それが海軍中尉・加納敬作であった。
敬作のりりしさにあこがれた安代は、彼の妻になった。
少女時代の延長のような稚なさの安代が、帝国軍人の妻らしくなりたいと努力し、緊張するほど、無邪気な失敗がくり返された。
そんな妻を、敬作はいとしく思った。
戦いは次第に苛烈さを加え、敬作の出征中に、安代は男の子を生んだ。
そして半年の後に、敬作の戦死が伝えられた……。
ほかに「猫」「山」「二人の女」を収録。
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