琵琶湖が一望に見下される泰門庵の庵主・梵仙は、眉涼しく筋骨たくましい青年であった。<br />尼僧の舜海も、画学生の阿井子も、祗園の美しい芸子すら、身を投げだして悔のない魅力をそなえていた。<br />しかし、法燈のもとの愛欲の業は、五条の親分の怒りを誘い、梵仙の法衣もまた風を孕む。<br />厳しい戒律に反抗しつづける梵仙。<br />彼によって女の灯を点された舜海尼。<br />ここに生々しい人生図があった。<br />……