河内国弓削ノ邑に住む貧しい鷹の羽取りの青年・道鏡は、馬の化身かと疑われるほどの肉体のために、村の娘にも相手にされなかった。<br />弟の浄人が恋人を抱くのを垣間見るにつけ、道鏡は懊悩した。<br />そして憤りは野心に変った。<br />彼は家を出奔した。<br />都大路で若く美しい皇女のお姿を拝した。<br />思えば、後に女帝の御寵愛を一身に集め、空前絶後の権勢をふるった怪僧・道鏡の第一歩はここにあった。<br />