巨星徳川家康のひたむきな姿に接したとき、宗矩の眼は豁然と開けた。<br />文禄三年(一五九四)五月三日、家康が父石舟斎に入門した日が、又右衛門宗矩の新たな求道への旅立ちの日でもあった。<br />東西が激突した関ヶ原、大坂城の攻防を経て、家康の「道義立国」は実現に向かう。<br />生まれながらの将軍家光の時代になると、宗矩は若き貴公子をいかに名将軍に育てるか、多難な仕事が彼の双肩にのしかかる。<br />家康、秀忠、家光三代の師範として剣禅一如をなし遂げた男の生涯。<br />