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国枝史郎伝奇文庫 明暗二道

戯作者の鵞湖亭茅舎が、木曽へ向かって旅立ったのは、天保10年の夏のことでした。
鳥居峠まで来た時でした。
一人の武士が鵞湖亭を見詰めながら立っていました。
ところがちょっと意外なのは、その武士が顫えていることでした。
…………老婆が一人崖っぷちに、切り倒されておりました。
(さっきの武士が切ったんだろう)(抵抗力もないあんな老婆を、何故あの武士は切ったのだろう?)…………鵞湖亭茅舎の行く先々にもちあがる、意外、不思議な事件の数々!




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