神々の岩壁
南は、ハーケンを打つ右手に、異常を感じた。
手ごたえが甘い。
垂直300メートルに屹立する衝立岩にとりついて3日目、最後の一滴の水もつきていた。
バランスを失って、危うく墜落しそうになる。
もはや彼の心には、岩に対する憎しみだけがあった。
登攀不可能といわれる衝立岩は、神々の手に守られて、人間を拒んでいるかに思える。
それでも、南は危険な垂直の前進をやめようとしない! 少年の日、登山家を夢見ていらい、ヒマラヤを志して精進を続けた、天才的クライマーが、魔の谷川岳、衝立岩に挑む姿をえがいた実録小説「神々の岩壁」はじめ山岳小説4篇。
更新中です。しばらくお待ちください。