鶴の来る町
南国・薩摩半島の農家に生まれ、枕崎のあいまい屋で働いているかね子は、一度だけ男にだまされたことがあった。
それ以来、男に気を許すまいと誓っていたのに、蜂飼い男の刀祢吉が店に現われたとき、ふしぎな心の動揺を感じた。
刀祢吉は、妻に先立たれ、まだ幼い一人娘をかかえた、風采のあがらない男だった。
なぜ馬ヅラの蜂飼い男に惹かれるのか、かね子自身にもわからなかった。
まして、それが悲しい運命の序章になるとは、夢にも思わなかった。
……この作品は、貧しく世間知らずの二つの魂が、幸せを求めてのたうつ姿を、社会性のある眼で捉えた、美しい心の歌である。
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