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ほんのこども

横溢する暴力と身体、無垢なる魂の軌跡。
「やさしく恋するみたいに他の人体を壊す」元同級生あべくんからのメールにあった文章から着想したシーンをつないで、商業作家はあべくん自身の人生を小説にしようとする。
父による母殺傷事件、両親がころしころされていたあべくんはやさしく恋するみたいに他の人体を壊す。
殴られても反発するようによろこぶ身体。
やさしさや暴力で愛撫し合い痛みをこらえるようによろこぶ身体。
物語にかえろうとするから人生はつらく、日常が重すぎてひとをころしたくなる。
恋人をころして自分も死んだところで折り返し、あべくんの物語は無限に再生を繰り返す。
小説家があべくんなのかあべくんがかれなのか、やがてふたりの境界は曖昧になり、問い自体が意味を失う。
言葉を与えられていない領域に光をあて小説は紡がれ、大量虐殺の記憶が時空を架橋しやがて物語は侵蝕される。
――世界文学に接続する芥川賞作家の真骨頂・新境地。
――鴻巣友季子さん絶賛!読書量と強靭な知性に瞠目!’すべてのポートレイトは画家の自画像であり、すべての小説は自伝を目指すと言う。
おそらくすべての小説はどこかしら、一人称の失恋なのだ。
’’小説でなにかを「再現」することは、過去のよみがえりのように見えて、未然の予告なのだ。
すべてのフィクションは自伝を目指し、すべての自画像は他人の顔をしている。
’’かきあうこと、傷しあうこと、死にあうこと。
「かれ」と「私」、その人称空間のよじれは経験と真実味との落差そのものだ。
落差から、小説は来る。
’――鴻巣友季子(翻訳家)




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