身がわりの夜
それは少女だけに許された、幻のような記憶かも知れない。
下宿人だった画学生の杉浦が、正子の裸体を熱っぽくデッサンし、鮮紅色の乳房に、ふと触れた日の感傷は……。
正子は、いま新宿・元青線のバー勤め。
マダムの弥生は画家の未亡人で、かつて杉浦を愛した過去をもつ女だ。
「杉浦はパリの安宿で病いに臥せている」と耳にした正子は、パリ行きを決意した。
彼女は幻影を追って稼ぐ。
ある夜、正子がとった男は甘美な肉体の香に酔いながら、奇妙な述懐を始めた……。
女の感傷の傷跡を描く表題作ほか、全10篇。
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