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火の蛇

「あれは、あなただったのね」……大乃木容造に襲われたとき、美樹は、はじめて気づいた。
10歳の夏の嵐の午後、襖の外から垣間見た光景と、同じ姿勢だったからだ。
美樹の祖母・小しのを開花し、母の真穂を開眼させた容造は、せめて、生きている限り、ただの一度でいいから、美樹をこの腕に抱きしめてみたいという、火のような欲望に駆られていた。
美樹の激しい抵抗に、一度は燃えた容造も、その一言で全身から活力が萎えていった。
だが……。
宿命のかなしさ、女の業を描いた《火の蛇》をはじめ《秋扇》《うつり紅》など、全7篇を収めた短篇集。




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