歪んだ栄光
T省の屋上から墜落する人影を「私」は窓ごしに見たのだ。
前庭の花壇を鮮血にそめて惨死したのは「私」の上司・小田課長補佐だった。
新聞は「自殺」の原因に汚職の翳があるという……。
その3日後、こんどは若い雇員の本石幸一郎が走る列車から転落した。
報せをうけて豊橋に急行した「私」を見て、本石は「殺しに来たな!」とわめく。
その両眼は空虚に鈍く光っていた。
《この2つの事故が、どう関連しているのか?》。
「私」は戦慄すべき真実に直面した。
それは官僚機構にひそむ抑圧された青春の狂気である。
表題作他5篇を収録。
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