1955年、20歳の雅代は、美大で油絵を教える川久保悟郎の家に、娘の桃子の家庭教師を条件に住み込むことになる。<br />モダンな明るさに満ちたその家に母親の存在はなく、孤独な少女の心には飼い猫のララだけが入れるのだった。<br />緊張をはらみつつも表面は平穏な日々。<br />均衡を破ったのは悟郎の恋人の登場だった――。<br />30年の時を経て語られる悲劇的な事件の真相。<br />心理の綾を精緻に紡ぐサスペンス長編。<br />