【第26回小説すばる新人賞受賞作】「わしはずっと八月を、くり返してきたんじゃ」。<br />急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学のときに広島で被爆していた。<br />ある日、妻と娘は亮輔が大事にしている仏壇で古びた標本箱を見つける。<br />そこには前翅の一部が欠けた小さな蝶がピンでとめられていた。<br />それは昭和二十年八月に突然断ち切られた、彼の切なくも美しい恋を記憶する品だった。<br />