御茶ノ水、聖橋のたもとで演説をする奇妙な男。<br />ゴーゴリの「鼻」と後藤明生の「挟み撃ち」について熱く語るその男は、大声を出すには相応しくないマスクをしている。<br />そしてまた道行く人々もみな同様に。<br />なぜ誰もが顔を隠しているのか、男の演説の意図は何なのか。<br />支離滅裂に思える内容に耳を傾けるうち、次第に現実が歪み始め――。<br />政治小説の再来を目指した表題作の他三篇を含む幻惑小説集。<br />
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