「私たちはまだ呼ばれているのかもしれない。<br />あの土地にしみついた死の匂いに」――それぞれの母親を自殺で失った大学生のまことパン職人の嵯峨。<br />まこは日々、喪失感に怯えては嵯峨の子を欲しがり、そんなまこを嵯峨は、見守っている。<br />お互いにしか癒せない傷を抱えた二人。<br />少しずつ一歩ずつ、捕らわれていた過去から解き放たれ、未来へと飛び立っていく。<br />大人になる直前の恋と、魂の救済の物語。<br />