Matt
日本から移住してはや5年。
父と二人、オーストラリアに暮らす安藤真人は、現地の名門校、ワトソン・カレッジの10年生(16歳)になった。
Matt(マット・A)として学校に馴染み、演劇に打ち込み、言語の壁も異文化での混乱も、乗り越えられるように思えた。
そこに、同じMattを名乗る転校生、マシュー・ウッドフォード(マット・W)がやってくる。
転校生のマット・Wは、ことあるごとに真人を挑発し、憎しみをぶつけてくる。
「人殺し! おれのじいさん、ジャップに人生台無しにされたんだ!」。
第二次世界大戦、日本とオーストラリアの、負の歴史。
目をそむけてはならない事実に、真人――マット・A――は、自らの<アイデンティティ>と向き合う。
人種が、言語が、国が、血縁が、歴史が、17歳の少年の心と体を離さない。
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