「実は、梛子の元に通う者がおるのだ」柱の陰に潜んでいた我が父・保名からその言葉を聞いた時、さすがの安倍晴明も声調が狂った。<br />近所からモノノケ屋敷と常日頃呼ばれている安倍邸。<br />しかしその日常はいたって長閑なものであった。<br />居候の狐精の相手を探ることで父を落ち着かせた晴明だったが、彼の前に現れたのは、霊眼を保ち、不可思議な身形をした十四、五の少年――陵王であった。<br />