むかし、歌詠みの家に生まれた、歌の不得手な女がいた。<br />その女の名乗る名は、梛子。<br />清少納言の侯名を賜る彼女は、中宮定子の住まう登華殿に侯い、日々を暮らしている。<br />そこでは、華やかなこと、苦々しいことが次々と起こる。<br />だからこそ梛子は、其処こそが自らを活かし生かす場所なのだと、信じている。<br />――暦は、如月。<br />定子をはじめとする中関白家の隆盛は、華々しいものに見えたが……。<br />