建暦三(一二一三)年、春。<br />鎌倉に一人の女の子がいた。<br />名前は末里妹(まりも)。<br />幼い頃に身寄りをなくし記憶のない彼女は、自分の本当の名前を知らない。<br />十三夜の月を見ながら由比ヶ浜を歩くことを好み、穏やかな日々を願っていた。<br />だが、婚約者である七郎、そして兄のように慕っている小二郎が、幕府への謀反の渦に巻き込まれていく。<br />そして末里妹もまた……。<br />※イラストは収録されていません。<br />