三十三歳の遼賀が受けた胃癌宣告。<br />どうして自分が……涙が溢れてきて、恐怖で震えが止まらない。<br />その時、郷里の岡山にいる弟の恭平から荷物が届く。<br />入っていたのは、十五歳の頃、恭平と山で遭難した時に履いていたオレンジ色の登山靴。<br />それを見た遼賀は思い出す。<br />あの日のおれは、生きるために吹雪の中を進んでいったのだ。<br />逃げ出したいなんて、一度たりとも思わなかった――。<br />