明暦の大火が江戸を焼いて、一年が経った。<br />人々の生活は未だ落ち着かないままだ。<br />糸はひとり長屋で暮らしていたが、縁切りの手紙を代書する依頼を勢いに負けて引き受けてしまう。<br />浮気亭主との別れ、悪友との絶縁、愛し憧れた役者との別離、親子の決別……「縁切り屋」として立ち会った様々な別れがもたらすのは不思議と涙だけではなかった。<br />あたたかな別れを描いた時代連作短編シリーズ第一弾!