時田翼32歳、農協勤務。<br />九州の田舎町で、大酒呑みの父と二人で暮らしている。<br />趣味は休日の菓子作りだが、父は「男のくせに」といつも不機嫌だ。<br />そんな翼の日常が、真夜中の庭に現れた’ゆず泥棒’との出会いで動き出し……(「大人は泣かないと思っていた」)。<br />恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す──色とりどりの涙が織りなす連作短編集。<br />