火影に咲く
「川というのは無慈悲なものよ。
絶えず流れて一時たりとも同じ姿を見せぬのだから」(詩人・梁川星巌×妻・張紅蘭「紅蘭」)/「わしにもいつか、そねーな日が来よるかのう。
日なたを歩ける日が」(長州藩士・吉田稔麿×小川亭の若女将・てい「薄ら陽」)/「死んだって、生きてるんだよ。
なにひとつなくならない。
あたしが、あの人を慕っていたことも、あの人があたしを何より大事にしてくれていたことも」(新選組・沖田総司×労咳病みの老女・布来「呑龍」)――。
新選組の沖田総司や土方歳三、吉田松陰門下生の高杉晋作や吉田稔麿、西郷隆盛らとともに戊辰戦争へと突き進む中村半次郎……。
幕末の京を駆け抜けた志士たちも喜び、哀しみ、そして誰かを愛し、愛された。
激動の歴史の陰にひっそりと咲く’かけがえのない一瞬’を鮮やかに描き出す全6編を収録した短編集。
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