屋上、夕焼け、こぼれる涙。<br />白くて、細くて、でもゴツゴツした手。<br />初めて会ったその人に。<br />名前も知らないその人に。<br />あたしはどうしようもなく、心を奪われてしまった。<br />恋をするという事。<br />その感情を知るほどに。<br />思い出す、苦い記憶。<br />彼に近づくほどに。<br />彼が抱える心の傷を知る。<br />それでも。<br />人を好きになる強さをくれた彼に。<br />…伝えたい事が、あるんだ。<br />高二の夏。<br />あたし、佐倉幸(さくらゆき)が知る初めての感情は。<br />―苦くて甘い、恋心。<br />