許されぬ恋におち、駆け落ちをしてヴェニスにたどりついたサンヴィルとレオノール。<br />二人はこの水の都で離れ離れとなり、互いに求めあって各地をめぐり歩く。<br />――本書でサンヴィルが回想するこの冒険旅行は、波乱万丈の展開をみせるが、なかでも異彩を放っているのが食人国と美徳の国の登場で、ここにおいて、サドはそのユートピア思想を鮮烈に表現している。<br />