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すみなれたからだで

焼夷弾が降り注ぐ戦中の東京で真智子が過ごした峻烈なる一夜、沈みゆく昭和末に文が養父から教えられた喜び……時代を超え、生きることに通底する痛みと輝きを凝視する短篇集。
無様に。
だけど、私はまだ生きているのだ。
三年前のよく晴れた冬の日、五日市線の終着駅から父が入居予定の施設に向かったわたし。
厳格な祖母が取り仕切る古い商家で、家業が傾いてもなおひっそりと生きた、かつての父のすがた。
そしていま、自分の人生を選び取ることですれ違っていく夫との関係――わたしにとって、生きるということは、二人の男を棄てることなのだった……(「父を山に棄てにいく」)*【収録作品】父を山に棄てにいく/インフルエンザの左岸から/猫降る曇天/すみなれたからだで/バイタルサイン/銀紙色のアンタレス/朧月夜のスーヴェニア/猫と春




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