カトマンズ・イエティ・ハウス
十四の街角を曲がり……喧噪から瞑想へ、現実から幻想への旅 言いわすれたが、おれはケイ。
齢は二十二。
日本の情報は少しは入る。
いま、やっているバイトのせいさ。
バイトは、いうならばガイドだった。
二、三年前にここにいた日本から来た放浪族が、どういうぐあいか、つけたコネを、つぎつぎいろんなやつが引き継いで、おれのところまでまわって来ていた。
(「カトマンズ・イエティ・ハウス」より) のっぺらぼうの人間などあり得ず、常ならぬ部分、ゆがんだ部分は誰にでもある。
どこか「常ならぬ部分」をかかえこんだ人びとを描いた短篇集。
・坂道・街角・草原・秋の日・広場・暴力・春の影・すばらしい冬の日・冬の日の鳩・サマータイム・おれのバイオレンス・炎のなか・ラジャスタンの笛吹き・カトマンズ・イエティ・ハウス●河野典生(こうの・てんせい)1935年1月高知県生まれ。
詩作、劇作のかたわら1960年『陽光の下、若者は死ぬ』でデビュー。
1964年『殺意という名の家畜』で推理作家協会賞を受賞。
日本のハードボイルド小説の先駆者となる。
幻想派SF小説、ジャズ小説など、多彩な執筆分野とジャズのフィーリングを持つ作家として特異な存在。
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