ルーシーは爆薬持って空に浮かぶ
ジャズとロックのリズムをバックに、幻想と笑いと反逆が爆発する あいつ、J・Lが死んだのは十二月八日、ニューヨーク時間の真夜中、おれが知ったのは、何となく寝ぼけまなこでボヤーッと見ていた昼間のテレビの短かいニュースだ。
へえー、とおれは思っただけだ。
あのJ・Lさんがねえ、お気の毒に、と言ったところ。
だから、あいつという感じでもない。
いや、とてもあいつなんて、言わせていただくわけにはゆかない、お偉いお方が亡くなったのだ、そういう感じだったというわけ。
(「ルーシーは爆薬持って空に浮かぶ」より) ジョン・レノンの死と少年たちの生活を描いた表題作、『街の博物誌』を彷彿とさせる「ブルースマン」など、音楽との関わりが深い13作品が収められた短篇集。
・ブルースマン・あいつの夢・リヴァーサイドの不思議な空・アンダーグラウンド・おジイさんの輝ける日々・笑い男・花・徳さんのヌートピア・夜の会話――腹を割る・犬神屋の一族・モンスター・少年たちの夜・ルーシーは爆薬持って空に浮かぶ●河野典生(こうの・てんせい)1935年1月高知県生まれ。
詩作、劇作のかたわら1960年『陽光の下、若者は死ぬ』でデビュー。
1964年『殺意という名の家畜』で推理作家協会賞を受賞。
日本のハードボイルド小説の先駆者となる。
幻想派SF小説、ジャズ小説など、多彩な執筆分野とジャズのフィーリングを持つ作家として特異な存在。
更新中です。しばらくお待ちください。