人でなしの遍歴
おれを殺そうとしている者は、いったいだれなのだろう? 体調が思わしくない、気力も湧かない。
生きていても仕方がない。
半ば厭世観に囚われた篠原喬一郎は、三度命を狙われたとき、甘んじて殺されてやろうとさえ思った。
しかしその相手だけは知っておきたい。
喬一郎は、悪行の限りをつくした自分の半生を振り返り、恨みを抱いているであろう犯人候補者六人の許へ赴いた…。
●多岐川恭(たきがわ・きょう)1920年福岡県生まれ。
東大経済学部卒。
戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。
1953年『みかん山』で作家デビュー。
『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。
以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。
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