こわがらないで…
耳元で誰かが「ふふっ」という不快な含み笑いを漏らした その事件の発端は、写真部の友人が撮った一枚の心霊写真だった。
柏木勉の背後に映った黒いマントの男……その影は、十年ほど前に妹の睦美をさらおうとした男に瓜二つだったのだ。
それを思い出した時、勉にははっきりと、「きいっ」というあのブランコの音が聞こえた。
やがて、睦美の周りで奇妙な出来事が起きはじめ……。
傑作サイコ・ホラー長篇。
●朝松 健(あさまつ・けん)1956年札幌生まれ。
東洋大学卒。
出版社勤務を経て、1986年『魔教の幻影』でデビュー。
ホラー、伝奇など、幅広い執筆活動を続けている。
2006年『東山殿御庭』が第58回推理作家協会賞短編部門の候補となる。
近年は室町時代に材をとった幻想怪奇小説〈室町ゴシック〉、一休宗純を主人公とした〈一休シリーズ〉、妖怪と人間との心温まる交流をユーモアたっぷりに描いた〈ちゃらぽこ〉ほかの妖怪時代コメディなどを発表している。
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