その涙ながらの日
世の中、まじめに生きるべきだ……それ以外、どうしようもない 俺はトラックの運転手、学問はなくてもちゃんと喰っている。
恋人もいる。
兄と弟は国立大学に入って頭はいいが貧相だ。
前科者と一緒になった姉と縁を切ろうとしている。
冷たい仕打ちじゃないか…。
俺にはヒロという好きな女がいる。
アパートに週に二回、石材屋の老人が来ることも、久男というキザな男と深い仲にあることも、ちゃんと知っている。
でも、俺はヒロを許す。
愛しているからだ。
そのヒロが、ある日、タチの悪いイタズラをした…。
(「その涙ながらの日」) 第82回芥川賞候補である表題作のほか、「ラストラウンド」と「素晴らしい歳月」の中篇3本を収録。
世の中をまじめに懸命に生きる心やさしい生活者たち、そのさわやかな苦闘を活写する。
●吉川良(よしかわ・まこと)1937年、東京生まれ。
芝高等学校卒、駒澤大学仏教学部中退。
1978年『自分の戦場』で第2回すばる文学賞受賞。
1979年『八月の光を受けよ』で芥川賞候補、『その涙ながらの日』で二度目の候補、1980年『神田村』で三度候補となった。
1999年JRA馬事文化賞、ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。
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