時界を超えて 東京ベルリンの壁
米ソによって東西に分断された日本、偽造パスポートで‘向こう側’へ渡った男は… ソ連支配下の〈日本人民共和国〉からアメリカ支配下の〈日本民主共和国〉へ亡命した画家の矢川岳。
別れた妻から一ヵ月前のパリの消印のある手紙を受け取った彼は、危険を顧みず国境を越えた。
だが妻は、一年前の火災で死んだという。
不審な思いで焼け跡を訪ねた矢川がそこで見たものは…。
(「時界を超えて」より) 米ソに分断統治された日本が舞台。
かつて亡命した男が妻に会うため‘西側から東側へ’越境する中篇「時界を超えて」、少年が自らの勇気を試すため‘東側から西側へ’越境する短篇「ひきさかれた街」、さらには聖徳太子を主人公とした短篇、計3本のSF作品を収録。
*時界を超えて*ひきさかれた街*クロノプラスティック六〇二年●藤本泉(ふじもと・せん)1923年、東京生まれ。
日本大学国文科卒業。
1966年に「媼繁盛記」で第6回小説現代新人賞を受賞し文壇にデビュー。
部落問題を扱った第17回江戸川乱歩賞最終候補「藤太夫谷の毒」(のちに『地図にない谷』と改題して刊行)、第75回直木賞候補『呪いの聖域』、第30回日本推理作家協会賞長編賞候補『ガラスの迷路』など話題作を立て続けに発表したのち、1977年に『時をきざむ潮』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。
その他、伝奇ミステリ「えぞ共和国」シリーズなど著書多数。
1989年2月、旅行先のフランスから子息に手紙を出したのを最後に消息を絶ち、行方不明のまま現在に至っている。
更新中です。しばらくお待ちください。