新宿警察
シャリーと呼ばれるその娘は、少女売春のかすりを取るような顔役だった 一人二人でなく、数人の女の声がする。
ほとんど同時に、どっと乱闘がおこったような音が聞えてきた。
ちょうど根来が歩いている右側の路地からの騒ぎである。
それで根来は、反射的に駈けだし、その路地の中をのぞいた。
瞬間、目の前に、若い女が立ちはだかった。
はっと根来が立ちどまると、まだ十六、七の黒っぽいツナギのような服のスケバンらしいのが、「見世物じゃないよ、いきなっ」と白い顎をしゃくった。
(本文より) 日本の警察小説史上に輝く最大の金字塔、「新宿警察」シリーズが全集として電子で復刊! 本書は長篇「あたしにも殺させて」を収録。
巻末に書評家・杉江松恋による解説を収録。
*あたしにも殺させて●藤原審爾(ふじわら・しんじ)1921年、東京都生まれ。
「小説の名人」と讃えられ、純文学から中間小説、推理小説、犯罪・スパイ小説、歴史・時代小説、恋愛小説など多種多様なジャンルにまたがって作品を発表。
初期の代表作『秋津温泉』や、『泥だらけの純情』『新宿警察』など、映画・ドラマ化された作品も数多い。
1952年「罪な女」等で第27回直木賞を受賞。
監修:杉江松恋(すぎえ・まつこい)1968年、東京都生まれ。
ミステリーなどの書評を中心に活動中。
著書に海外古典ミステリーの新しい読み方を記した書評エッセイ『路地裏の迷宮踏査』(東京創元社)、『読み出したら止まらない 海外ミステリーマストリード100』(日経文芸文庫)など。
2016年には落語協会真打にインタビューした『桃月庵白酒と落語十三夜』(KADOKAWA)を上梓。
近刊にエッセイ『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA)がある。
更新中です。しばらくお待ちください。